【環境省補助事業】

登山道整備

[社会教育][環境保全][観光振興]

昨年度に引き続き、2021年度も焼岳(中部山岳国立公園)の登山道整備を行います。
昨年は「上高地ルート」「新中の湯ルート」それぞれについて、およそ標高1,600m~2,000mのエリアを中心に整備しました。今年は去年できなかった「新中の湯ルートの標高2,000mより上」のエリアを整備する予定です。

スケジュールは

の予定です。
CO2の排出削減のため、角材、鉄筋、番線などの資材からハンマー、つるはし、バールなどの工具まで、すべて人力で運び上げることから始まります。

必要な資材はすべて人力で運び上げる

登山道整備は通常、そのルート上の山小屋が行っていることが多いですが、焼岳日々のメンテナンスが登山道の浸食に追い付いておらず、大掛かりな整備は近年、行われていない状態です。

その間に雨などの侵食で掘られたり段差が大きくなっている箇所を重点的に直します。したがって「侵食を食い止めること」が一番の狙いとなります。

標高2,000m付近で針葉樹林帯がなくなり、空が開けます。このあたりから、侵食によって地面が数十cm掘られてしまっているところがあちこちに出てきます。樹林帯がなくなったことで雨の影響を直接受けているせいかもしれません。また近年の豪雨化によって侵食スピードが加速しているのかもしれません。いずれにしても今止めないと、ますます侵食が進んでしまいます。

標高2,000m付近から焼岳を見上げる

例えば段差が大きい箇所に大きな石を積み、その周りを小さな石で埋めることで土の露出を抑えます。

石積み

さらに段差が大きい箇所には階段(ステップ)を設置し、その中を石で埋めることで同じく土の露出を抑えます。
この階段はあらかじめ設置する箇所毎に角度を計り、工作したものを荷揚げします。整備箇所毎に番号を振り、その番号に照らし合わせて階段を設置します(今度焼岳を登る際には、階段に番号が書いてありますので探してみてください)。なおこの整備箇所番号は、昨年は「126」に及びました

階段(ステップ)

小さな段差は角材を鉄筋で固定し石で埋めることで、段差を階段状にするとともに、侵食と土砂の流出を抑えます。

土留め

鉄筋を地面に打つ、地面を掘って角材を埋める、番線を使って固定する、大小様々な石を探して運んでくる、敷き詰める・・・、これらはすべて人力による作業です。ここでもCO2排出削減のため、重機は使いません。

1日に5名ほどのメンバーが現場に入り、シフトを組んで作業にあたります。すべてやまたみの会員で、多くは普段ガイドをしているメンバーです

整備作業風景

雨の日も雪の日も作業は行われます。特に10月末には雪が降り、11月に入ると地面が凍結して固くなるため作業は難航します。作業後半は冬の足音との戦いになります。

雪が降った中での作業

作業は「限られた予算、工期の中でできる範囲での整備」にとどまります。したがって、ルート上のすべての整備を完璧に終えることはできません。そして雨が降る度に侵食は進むため、今後も継続して直し続ける必要があります。

山を守るために、そして安全に登山を楽しんでいただくために、引き続き整備していきたいと考えています。

また、登山道整備の意義や工法を知っていただくための「学習会」を開催します。

昨年は県内外の方に参加いただき、参加された皆さんは大変熱心に話を聞いていました。

昨年初めてこのような学習会を開催してみて、参加者からの感想を聞く中で、こういった啓蒙活動の大切さを実感しました。一般登山者の皆さんは普段「登山道」を意識することはほとんどないですが、登山道整備の意義、重要性、苦労を知ることで見る目が変わり、登山の楽しみ方がより深まることでしょう。全国的にもめったにない機会ですので、ぜひご参加ください(近日中に受付開始予定)。

なお前回の学習会の様子はアルプス山岳郷の記事に掲載されました。より詳しく紹介されていますので是非ご覧ください。

昨年の学習会の様子