登山道整備

[社会教育][環境保全][観光振興]

環境省の「令和2年度(補正予算)国立・国定公園への誘客の推進事業費」を活用して

の登山道整備を行いました。


補助事業の発表の後、資料提出、審査を経て交付が決定したのが9月上旬。それから整備作業に入ったため、実質10月~11月の2ヶ月間というタイトなスケジュールとなりました。

しかも11月は上高地の閉山(11/15)に加え、雪の足音との戦いでもありました。

予算の都合上ヘリコプターでの荷揚げはできないため、角材、鉄筋、番線などの資材からハンマー、つるはし、バールなどの工具まで、すべて人力で運び上げることから始まりました。

必要な資材をすべて運び上げる

登山道整備は通常、そのルート上の山小屋が行っていることが多いですが、焼岳、美ヶ原ともに日々のメンテナンスが登山道の浸食に追い付いておらず、大掛かりな整備は近年、行われていない状態でした 

その間に雨などの侵食で掘られたり段差が大きくなっている箇所を重点的に直しました。

したがって「侵食を食い止めること」が一番の狙いとなります。

例えば段差が大きい箇所に大きな石を積み、その周りを小さな石で埋めることで土の露出を抑えました。

石積み

またあらかじめ角度を計って工作しておいた階段を設置し、その中を石で埋めることで同じく土の露出を抑えました。

ステップ

角材を鉄筋で固定し石で埋めることで、段差を階段状にするとともに、侵食と土砂の流出を抑えました。

土留め

鉄筋を地面に打つ、地面を掘って角材を埋める、番線を使って固定する、大小様々な石を探して運んでくる、敷き詰める・・・、それらはすべて人力による作業です。

1日に5名ほどのメンバーが現場に入り、シフトを組んで作業にあたりました。全工期を通じて総勢20名以上の会員が関わりました。

整備作業風景

雨の日も雪の日も作業は行われました。特に11月に入ってからは地面が凍結して固くなったり、雪の中から石を探すなど作業は難航しました。

雪が降った中での作業

今回は

について整備を行いました。しかしながら「限られた予算、工期の中でできる範囲での整備」にとどまります。したがって、ルート上のすべての整備が完了したわけではありません。また暫定措置しかできなかった箇所もあります。

山を守るために、そして安全に登山を楽しんでいただくために、引き続き整備していきたいと考えています。また近年雨の降り方が豪雨化している影響もあり、今までにないペースで登山道の荒廃が進んでいます。1度やって終わりではなく、継続して取り組んでいく必要性を強く感じました。

また、登山道整備の意義を一般登山者のために知っていただくための「学習会」を開催し、県内外の方に参加いただきました。整備したばかりの登山道は整備箇所が新しくてわかりやすく、実際に作業に取り組んだリーダーからの生の声は非常に熱があり、参加された皆さんは大変熱心に話を聞いていました。

今回初めてこのような学習会を開催してみて、参加者からの感想を聞く中で、こういった啓蒙活動の大切さを実感しました。一般登山者の皆さんは普段「登山道」を意識することはほとんどないですが、登山道整備の意義、重要性、苦労を知ることで見る目が変わり、登山の楽しみ方がより広がることでしょう。来年以降も一般向けの学習会を開催していく予定です。

なお今回の学習会の様子はアルプス山岳郷の記事に掲載されました。より詳しく紹介されていますので是非ご覧ください。

説明に耳を傾ける参加者